アルフくんはお花見がしたい!

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アルフくんはお花見がしたい!

 暖かい空気が、ほわほわと巣穴の外から流れこんできます。そっと土をどけて外を見たアルフは、わあ、と声を上げたのでした。  おひさまの良い匂い。  甘い花の蜜の匂い。  それから、それから、それから。 「ねえみんな、見てよ!春だよ、春が来たよお!」  巣穴の中でじっとしていた仲間たちに、アルフは声をかけました。小さな木の芽が、そこかしこに生えてきていることに気が付いたからです。  アルフは、小さなアリの子供です。  冬は巣穴の中で、仲間たちと一緒にじっとしています。この国のアリは冬眠のようなことはしませんが、冬は食べ物がないので、蓄えた食べ物を食べつつじっとしているしかないのです。  だから、アルフは冬が好きではありませんでした。外に遊びに行くこともできないし、美味しいものをたらふく食べることもできない。とても退屈な季節だったからです。 「わあ!」 「ほんとだ、ほんとだ、ほんとだ!」 「あったかくなってきたね!」 「遊びにいけるよおおおおお!」 「やったあああああああああああああああああ!」  アルフの呼び声に、アリの仲間たちが次々と巣穴から這い出してきました。  冬が退屈で、さっさと外に出て遊びたかったのはアルフだけではなかったようです。好奇心旺盛な子供から先に次々と外へ飛び出していきます。 「ああ、ちょっと待ちなさい!みんな、あんまり遠くに行ってはいけないわよ、迷子になってしまいますからね!」  みんなのお母さんアリが、慌てたように言いました。 「特に、私達のこの公園の外に出るのは危ないわ。人に踏みつけられたらどうするの?車に轢かれたら?水たまりで溺れるのも大変なことなのよ、いいわね?」 「はあい!」 「わかってるってばあ!」 「いってきまああああああああああああああああああああす!」 「挨拶しながら猛ダッシュしないの!!」  彼女の忠告は尤もなことだったでしょう。しかし、それはそれとしてみんなわくわくが止まらないのです。中には、この春からやっと外に出ることが許された小さな子供のアリもいます。  外の世界はどうなっているのでしょうか。  今日はどんな冒険が待ち受けているのでしょうか。  子供達は楽しみでたまらないのです。 ――これでやーっと、退屈な巣穴から解放される!  アルフは春の匂いをいっぱい嗅ぎながら外の土の上で走り回ったのでした。
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