アルフくんはお花見がしたい!

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 ***  そんなある日のことです。 「あ!」  自分達の巣穴は、大きな桜の木の根元にあります。上を見上げたアルフは、少しずつ枝の先についたつぼみが大きくなっていることに気付きました。  もうすぐ桜が咲こうとしているのです。素敵なお花見の季節がやってきます。 「そうだ、お花見だ、お花見の準備をしなきゃだ!」  アルフは思い立ちました。去年はアルフもまだ小さかったので、春にあまり外に出ることができなかったのです。今年は子供とはいえ、立派な大きさのアリに成長しました。外に出て、みんなと一緒にお花見しながら御馳走を食べる。そんな贅沢もきっと許されることでしょう。  もちろん、自分達のお母さんの許可を得る必要があります。巣穴に戻ってお母さんに相談しようとした、その時でした。 「花見だあ?やめとけやめとけ。お前ら蟻なんか、踏みつぶされておしまいだっつの」 「え」  何やら物騒な声が聞こえてきました。なんだろう、と思って桜の木を見上げたアルフは、上からふわふわと降りてくる存在に気付きます。  それは白いワンピースのような服を着て、蝶々のような羽根をくっつけた小人でした。姿形は人間によく似ていますが、人間はこんなに小さくはないし、空を飛ぶこともできないはずです。あっけにとられて見つめるアルフに、よお、と彼は挨拶をしてきました。  彼はピンクの髪をした、可愛い男の子の顔をしています。一体何者なのでしょうか? 「お前と会うのは初めてかもな。俺は桜の妖精だ。名前はチェリー。よろしくな」 「よ、よろしく」  乱暴な口調に対して、男の子の顔立ちは可愛らしく、名前もとても可愛らしいものでした。  少し驚きましたが、妖精というならば納得です。そういえば昔、アルフがお母さんに読んでもらった絵本に、妖精さんの話があったことを思い出しました。 「えっと、なんでお花見をやめなきゃいけないの?僕、桜の木を花を見て、御馳走を食べたいだけなんだけど」  理由を教えてほしい。  そう問いかけるアルフに、あー、とチェリーは明後日の方向を見ます。 「えっと、お前にはなんのこっちゃな話だろうけど」 「うん」 「この公園の桜の木は、そりゃあ見事なものだ。でも、田舎の公園だから、今までは有名じゃなくって、人間もあまり見に来なかったんだ」  それは、なんとなく知っていることでした。自分は去年はお花見に参加していませんでしたが、それでも参加した友達の話は聞いています。  お花見を楽しみたいのは人間も同じでしょう。しかし人間がたくさん来てしまうと、アリたちにとってはとても危なくて大変なことになってしまいます。彼等はシートを敷いて座り込むので、アリたちの巣さえ塞がってしまうことがままありますし、外に出ていたら踏まれてぺしゃんこになってしまうからです。  それでも去年までは、人が少なかったのでお花見ができたと聞いていたアルフでしたが。
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