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もしもし。
今、大丈夫?
この前、駅前のあの時計台の下で久しぶりにキミに出会えてびっくりしたよ。
以前付き合ってた時によく待ち合わせしてたあの時計台下で偶然出会うなんて、運命だよね。
アタシ達ってやっぱり、お互い…
いや、なんでもない。
キミに会ったのは二年ぶり?
知らない間に髪も伸びてて。
しかもヒゲも生やしてて、似合ってなさすぎて笑っちゃった。
あ、でも少し痩せた?
ちゃんと栄養のあるもの食べてる?
仕事が忙しくなると食事なんて二の次になっちゃう性格は、付き合ってた頃そのままなのかな?
『仕事のためにハルカを振った俺に、彼女を作る資格ないよ』
そう。
お互いが嫌いになって別れたわけじゃないんだよね。
それは分かってる。
でもアタシはしばらく立ち直れなかったんだよ。
キミはだらしないところをちゃんとすればそれなりにカッコいいんだから、彼女たち作ろうと思ったら、すぐできるはず。
アタシがフラフラしないように早く…、
って、えっ?アタシはどうかって?
実は、この前は言えなかったんだけどさ。
なんとこのハルカさん、まさかの結婚するらしいよ。
笑っちゃうでしょ?
このアタシがだよ?
料理が苦手で、キミの部屋で何か作る時も、武器がたまご丼一本槍だった、このハルカさんがだよ?
そのハルカさんが、カレのために一生懸命、料理教室通ったりしてさ。
カレのために、好物のハンバーグでも作ろうかなーなんてさ。
笑っちゃうでしょ?
そうそう、この前はカレと衣装合わせに行ってね。
カレの実家の意向で、披露宴の招待客も100人近くいて、仲人もたてて、しかもお色直しも2回もあるんだよ?
…ほんっと、結婚って、なんなんだろうね。
ごめん。
アタシ、何が言いたいんだろ。
ごめん。
ごめんね。
この前、時計台の下で出会ったのはさ。
実は…
偶然じゃないんだよ。
ココに行けば、キミに出会えるかもって。
足繁く通ってさ。
キミにもう一度会いたいって一心で。
そして『もう一度やり直そう』って言って欲しくてさ。
もしそんなことが実現してたら、アタシも心の中に閉じ込めた想いを曝け出す勇気が持てたのかな…。
でも現実は、そんなことはなくて。
この二年の間に、
キミはいつの間にかちゃんとしたオトナになってて。
アタシも気持ちを綺麗に隠せて、分別のつく、常識的なオトナになってた。
だから…
だからハルカさん。
結婚するね。
それじゃ、バイバイ。
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