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極めし男
「俺たちの青春のために」「俺たちの青春のために!」
小学、中学、高等学校、足かけ十二年、俺たちの人生はイケてなかった。垢抜けたい、彼女が欲しい、せめてチヤホヤされてみたい。そのためにはまず元手が必要だろう。そう考えた俺たち幼なじみ二人組は、賞金目当てにオンラインゲームに参加することにした。
そのゲームは三人一組のチーム戦。「あと一人どうする?」俺たちは友だちがいない。ネットで募集をかける。手をあげてくれ! 誰でもいいから!
祈る気持ちで画面を見つめていると、参加の通知がきた。「〈極めし男〉さん?」「自称するくらいだから強いんじゃね?」
結果はボロ負けだった。こっちから参加を頼んだけど責めずにいられなかった。
「極めてるんじゃないんですか?」
「今日は調子が悪い」
「調子どころの問題じゃなかったよ?」
しばらく沈黙の後、奴は言った。
「……我はネットミームを極めし男」
一人だけの作業が寂しくなり、俺たちの呼びかけに応じたらしい。
俺たちは顔を見合わせた。「なんつうか」「侘しいな」
リアルでバイトするより賞金をもらおうと、強くもないネットゲームに流れた。イケてない自分、充実してない現実から目を背けたくて大学デビューに夢を見た。
〈極めし男〉さんを責める気持ちはいつのまにか霧散していた。そして俺たちは彼と友だちになった。
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