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王が臣下としても血縁者としても信頼し、重んじている最高貴族たるロランヴィエル公爵に近づきたいと願う者は数えきれないほど存在するが、貴族が主に交友を深める舞踏会やお茶会にはいっそ見事なほど徹底的に参加せず、誰をも懐深くに入り込ませなかった。優しい微笑みを浮かべてはいるが謎に包まれたロランヴィエル公爵が公衆の面前でアシェルを求めたという事実を貴族が見逃すはずもない。貴族らしい考えを持つメリッサもまた、今回のお茶会が流れたところで諦めたりはしないだろう。国王ラージェンは勿論、ロランヴィエル公爵という存在はそれほどまでに価値がある。
「それに、言い出した者が場所の提供を他の者に強要するという部分に関しては非常識なことではありますけど、身内が結婚したとなれば親族が顔合わせとして晩餐会やお茶会を開くことは普通ですわ。ただちょっと、私共になると来る相手が陛下や公爵になるというだけで」
相手が普通の貴族であれば普通に行われることであるのだから、まだ正式には結婚しておらず、婚約に留まっているので少し急きすぎているという点を無視すれば、メリッサの考えがすべて間違っているとは言えない。ジーノやアシェルが何を恐れているかを理解できないフィアナではないが、ただ断るだけでは面倒な問題も発生するだろう。こういう時に父が元気で、ノーウォルトの舵を取ってくれていればと思わないでもないが、現状不可能であるのならば思うだけ時間の無駄だ。どれほど願ったところで現実は変わらない。
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