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「カロリーヌ夫人にとって場所だけが問題なのでしたら、城の一室を用意することも――」
「それは駄目だ」
何でもないことのように紡がれるフィアナの言葉を、今まで黙っていたアシェルが強い口調で遮った。妹には甘い部分が多々あるアシェルの強い口調に皆が視線を向ける。
「お兄さま?」
「フィアナの申し出はありがたいけど、でも城は駄目だ。陛下が自ら主催されるものならともかく、ただの臣下に過ぎない貴族の言い出した茶会で城の一室を使ってしまっては民にも他の貴族にも良い顔はされないだろうし、ノーウォルトは思い上がったと言われてしまう。何より、それで非難の的になるのが僕たちなら浅慮の結果だと受け入れるより無いが、陛下やフィアナが責められたりしたら国自体が揺らぐ。この城はフィアナの家でもあるが国の中核でもあり、陛下は恐れ多くも義弟でフィアナは妹であるけれど、その前にこの国の王と王妃だ。線引きを曖昧にしてはならない」
たった一度のお茶会に神経質だと思われるかもしれないが、妹が大切ならば神経質であるべきだ。普段は従順な貴族も、自分達の利益には貪欲で、他者を蹴落とす瞬間を虎視眈々と狙っているのだから、ほんの僅かの隙も見せるべきではない。
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