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「んー、何だろうね? アシェルの様子からして私の元に届いたものと同じような事が書かれていると思うけど、正直なところ私にもよくわからないんだ。妻にもまだ見せていないんだけど……本音を言えば、見せられないが正しいけどね」
それもそうだろう、とアシェルは小さく息をつく。カロリーヌ・アン・ソワイルは幼馴染であり夫であるジーノのことを誰よりも愛しているが公私混同はしない性格であり、何より貴族として、領地を預かる者としての礼儀や心構えを何よりも重視している。そんな彼女がこの理解に苦しむ手紙を見れば、眉を顰めて嫌味のひとつも言いそうだ。アシェルとしても、これをルイに見せるのは流石に躊躇う。
「一応、僕の勘違いということもあるでしょうから確認しますが、このお茶会というのはノーウォルトで開催されるものではないのですか?」
そう、手紙にはアシェルが結婚したので、この機会に兄弟やその伴侶で集まり、お茶会をしようとの誘いが書いてあった。王や王妃を公的なものでない茶会に誘うのも少し躊躇われるが、それでも内容がこれだけであるのならばアシェルもジーノも「またメリッサが暴走したのだろう」と思うに止め、大人しくお茶会に参加していたかもしれない。だが、これは〝招待状のようで、招待状でない何か〟だ。
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