ありあまるほどの、幸せを

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「公爵が兄上や義姉上をどう思うかなど僕にはわかりませんが、少なくとも僕はこの屋敷でお茶会をしたいなどと言いたくありません」  ルイの言葉を信じるなら、彼はアシェルが勝手に兄弟を呼ぼうと茶会を催そうと反対はしないだろうが、それはなんだか彼との結婚を自ら認めたようで気が進まない。それがただの無駄な抵抗にもならない抵抗だとわかっていても、アシェルはすんなりと流れに身を任せる気になれなかった。 「私にできないことをアシェルに強要する気は無いよ。それがどういう理由であれ、言えないということに変わりはないからね」  ノーウォルトとソワイルだけでの茶会ならば、ジーノとしてもカロリーヌとしてもさほど頭を悩ませることはなかっただろう。だが〝兄弟とその伴侶〟となってしまっては、やって来る〝伴侶〟の身分が高すぎる。 「……フィアナは、このことを知っているのですか? あの子は、なんと言ってました?」  ノーウォルトの兄弟で一番身分が高いのも、伴侶の身分が高すぎるのもフィアナだ。あまり妹に重荷を背負わせるのは申し訳ないが、ここは王妃でありラージェンの最愛の妻であるフィアナに判断を仰ぐのが一番だろう。
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