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「確かに、面倒事の予感ですわね……」
いつになく低い声で呟いて、フィアナは既に封を切られているそれから便箋を取り出すと静かに視線を滑らせた。便箋一枚分のそれはすぐに読み終わり、フィアナは扇を広げると口元を隠し、それはそれは深いため息をつく。
「……ジーノお兄さまのことだから、まだお話になってはいないのでしょうけれど、カロリーヌ夫人が頭を抱える姿が目に見えるようですわ」
便箋を封筒に戻しジーノに返したフィアナは再び大きなため息をつくと、カトラリーに手を伸ばした。さて、どうしようか。
「できれば陛下とロランヴィエル公爵の予定が合わないと言ってお茶会自体を断ろうかと思っているんだけど、流石に陛下の名を勝手に使うわけにはいかないから。フィアナはどう思う?」
「ジーノお兄さまのお気持ちはよくわかりますし、何もおっしゃらないということはアシェルお兄さまも同意見なのでしょうけれど、その程度であの方、諦めるかしら? 選んだ私が言うのもおかしな話ですけれど、あのロランヴィエル公爵とお近づきになれる好機ですのに」
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