泰斗の由香子

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「小笠原くん、今日は残業を頼めるかな?」と上司に言われたので、由香子に伝えに来た。 あっさり、いいよ。おしごとがんばってね。 なんて言われて少し寂しい。 なんだか一人で帰る事が嬉しそうに見えるのは気のせいか? あの事故の時、俺にとって由香子は大切な人だと気がついた。 このまま会えなくなってしまうのではないかと思った瞬間、何も考えられずに飛び出そうとした。 周りの同僚は、とても驚いたに違いない。 休暇届を出して走り出したはいいが、病院はどこだった? 慌てて、父親に電話すると「お前が事故ったら話にならない。安全運転で行け」と言われて苦笑。 病院に着くと、すでに兄達は着いていた。 「めぐみさんと由香子は?」と聞いても首を振るばかり。 今でもあの瞬間を思い出すとゾッとする。 あんな思いを二度としたくない、ずっと自分の側にいて欲しいと思っている。 今度のクリスマスに、自分と結婚して欲しいって伝えよう。 バラの花束を用意してプロポーズしようと決めた。 赤いバラは108本 それを花屋に頼みデパートに。 指輪のサイズは、リハビリの後で寝ている時にこっそり測り済み。 指輪もいろいろあるんだね。 結婚指輪をはめた時に一体化するのが人気だと聞いて、迷いに迷ってダイヤモンドの指輪に決めた。 24日に花屋に寄ってから由香子と待ち合わせる事にしよう。 皆んなのまえでプロポーズするか、それとも2人だけの時にした方がいいか。 まだ日があるから考えよう
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