1.Timing

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1.Timing

「優月、うちら友達やめようぜ。」 「..............え?」 秋の深まりも頂点を極める頃。私達の友情が、硝子のように砕け散った。 私は南陸優月。中学2年生。 期末試験も終わって、いよいよ冬休みだ!と冬を心待ちにしていた頃であった。 クラスこそ別れてしまったが、親友の大海日香と鐘城皐月と楽しい学校生活を送っていた。 ―――なのに。 「.......え、どうしてよ.....ってか、このタイミング?」 私は掃除当番であったため、同じ班のメンバーで階段掃除をしているところだった。 日香は掃除当番ではないが、私に話に来ていた。 当番でないものは、部活か帰宅のため移動するためにこの階段を利用する。 そのため、今沢山の同級生がこの階段を登ったり下ったりしている。 そういう話なら場所を移してほしい、と思ったが掃除中なので何も言えない。 「うん、うちは用事あるから早く話しておきたくて。お前と喋れる時間がここしかない。」 「ここの場所の理由は分かった。だけど、やめたいというのはなんでよ。」 私は一見すると傷つくことを言われている。だが皆がいるからなのか、案外冷静でいられる自分がいた。そんな自分が、一番恐ろしく感じる。 そんな自分と、日香に困惑しながら箒をはいていた。 「理由を話すと長くなるから言わない。」 「.......どういうことよ........」 その時こそ困惑しただけで済ませたが、今思うと怒りを覚えるような内容だ。理由も言わずに、私の前から去るなんて。せめて、理由を言ってからにしてくれ。 “キーンコーンカーンコーン” 掃除の終わりを知らせるチャイムが辺りに響いた。 「おい、5班。掃除の反省会をやるぞ。おい、南陸。清掃係は誰だ?」 掃除監督の和嶋先生が、大きな声を階段に響かせた。 「須藤です。はい、須藤。掃除の反省カード。」 「これから掃除の反省会をしまーす。気をつけー、礼。」 気怠そうな清掃係、須藤の声が、階段に響いた。 班反省の間、日香はその場で黙ったままだった。 「.......さよなら。」 掃除の反省会を終え、帰宅となった私に日香は耳打ちした。 「......さようなら、日香。」 出来れば、仲直りしたい。 そうその時は思ったけど、叶わないことだと悟ったのは1週間後のことである。 「.......ただいま......」 母や妹にはなるべく“いつも通り”を振る舞っているつもりだったが、私は分かりやすいのかすぐにバレてしまった。 このことは親に言うつもりであったため、バレても全く問題ないのだが。 「優月、おかえりなさい。何かあったんじゃない?大丈夫?」 「.......日香に“友達やめよう”って言われたんだ......」
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