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来栖くんの気持ちにはなんとなく気づいてはいたし、他のメンバーにも『そうなんじゃないの~?』と言われてもいた。でも飲み会などで『私は恋愛はしない。』と明言してバリアを張っていた。
この4年間に仕事関係の人や同級生から好意を伝えてもらったこともあった。でも私の心の中にはパラレルワールドで出逢った風凛くんがいて、今でも彼との思い出がつい昨日のことのように鮮明に残っている。私の中での『恋愛』イコール、彼であって、それはこれからも変わることはない。
「申し訳なさそうな顔しないで下さい・・・わかってるんです、答えは・・・ずっと見てたから。叶未さんの心の中に、俺には絶対にかなわない誰かがいるんじゃないかって。それに叶未さんが俺の気持ちに気づいてることも・・・。」
来栖くんはすごく苦しそうだった。
「それでも好きなんです。」
「来栖くん・・・。」
「自分のこと、好きになってください、なんて言いません。でも自分は好きなんです。ダンスも仕事もバリバリの叶未さんだけど、どうしようもできない何かを抱えてる。それひっくるめて、いや、そんな叶未さんだから好きなんです。こんなこと言ったところで、自分と叶未さんとの関係が変わるわけではないのわかってるし、逆に避けられることもあるかもしれない。それでも言葉にして伝えたかったんです。」
「ごめ・・・」
「謝らないで下さい。謝ったらキスします。」
「!?」
「自分の気持ちバレてるのわかってるのに、勝手に気持ちを伝えて迷惑かけたのは自分です。なので謝るのは自分です。ごめんなさい。」
「そんな、迷惑とかじゃ・・・。」
「コンテスト、頑張りましょう。あそこの箇所、次の練習までにもっとスムーズにできるようにしてきます。」
来栖くんはニカッと微笑んだ。たまにしか笑わない彼のその笑顔は私が大好きな風凛くんの笑顔に少し似ていた。
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