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「!?どうした!?体調悪いか!?まさか、さっきの指か!?すぐ病院にっ!」
新鮮なハチマキ姿の風凛くんがひどく慌てている。そんな彼に愛おしさが増していくのと比例して、夢が覚めて現実に戻った時の辛さも増していくのがわかる。
「あのね、ここは私の夢の中なんだ。」
「は!?」
「今年の私の誕生日。風凛くんと付き合って初めて迎える2月29日。二人で豪華なリゾートホテルに泊まったの。」
「おお、泊まったよな・・・初めて迎えたわけじゃねーけど。」
彼の言葉の前半に気持ちを奪われてしまい、後半は耳に入らなかった。
「泊まったの!?」
「泊まっただろ。メシもわけわかんねーくらいうまかったし、露天風呂一緒に入って最高過ぎたよな。まー、夢みたいって思って当然だけどさ。叶未あんまそういう冗談言わないから新鮮だな。」
風凛くんが愛おしそうに私を見つめてくる。この夢では私は彼とあのホテルで幸せな時間を過ごしたらしかった。
───それじゃあもしかして・・・。
「プロポーズ・・・してくれたの・・・?」
私がそう言った途端、風凛くんは固まった。
「・・・!?・・・ま、まあな・・・うん。俺、叶未とずっと一緒にいたいから。ほら。こっち来いよ。」
───夢の中ではプロポーズしてくれたんだ。
風凛くんが私を優しく抱きしめてくれる。この人は風凛くんとは別人だ。夢の中で幸せを感じても虚しいだけだ。目が覚めたら全てが跡形もなく消えてしまうのだから。
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