2月30日(金)

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梨衣乃は実家の一室でアロマセラピストをしている。今ここにいるわけがない。『岡部』は珍しい名字でもないし別人だろう。 「誘われたから行っただけだけど。断る理由なかったし。」 ───!!!どうしてここに!? そのアナウンサーのように聞き取りやすいはっきりとした声は梨衣乃のものでしかなかった。思いきって身を乗り出すとそこには茉結とお揃いの制服を着た梨衣乃の姿があった。 豊満な胸、キュッとしまったウエスト、タイトスカートが似合う形のよいお尻、細すぎない足がスラリと伸びている。お団子にまとめている髪をほどけばゆるふわパーマがかかったミディアムヘアのはずだ。 「確かに、私は地味で性格も暗いし胸も小さいし、岡部さんはすごく綺麗だし明るくて魅力的だから、男の人は惹かれると思う・・・でも、ユウくんが私の彼氏だって知ってるよね・・・?」 「知ってるよ?でも別に結婚してるわけでもないんだし、付き合ってる、なんて何の拘束力もないんだよ。あの人が気になるな、と思ったら一緒に過ごしてみて、今の彼女よりこの子がいいな、と思えば彼女と別れて付き合えばいいし、今のところ今の彼女と別れるほどじゃない、と思ううちは彼女と付き合ったままで会えばいい。もちろん男女共にね。」 「お、おかしいよ、そんなの・・・。」 茉結の力ない抗議を聞きながら、私の体は無意識にロッカーの陰から飛び出していた。そして梨衣乃の前に回り込むとその整った顔の頬を手のひらではたいた。
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