2月28日(水)

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高級リゾートホテルの一番いいお部屋。角部屋でオーシャンビュー。2人なのにトイレは3つ、バスルームは内外に1つずつあり両方ともジャグジー付きだ。なんとグランドピアノまで置かれている。仕事の関係で一泊しか出来ないので、ほとんどのスペースを全く使わずに終わってしまうことが惜しくてならない。 部屋に続々と運ばれてくる和洋中、贅を尽くした夢のような食事。目の前で調理してくれる料理もある。しかもピアノとヴァイオリンの生演奏つきときた。きっと亀を助けて竜宮城で盛大にもてなされた浦島太郎よりもずっといい思いをしているに違いない。 食事が終わり、お酒とおつまみだけが残された。 「・・・大事な話があるんだ。」 「うん・・・。」 神妙な表情の風凛くん。ドラマや漫画では何度も見てきた場面だ。それが私自身に起ころうとしている。何を言われるかはわかっているのに、いや、わかっているからこそ、否応なしに胸が高鳴る。心臓が喉まで上がってきているのではと思ってしまうくらいだ。 ───迷いは全くない。風凛くんは初めて付き合った人。唇も体も初めて許した人。本当に彼でよかった。彼に出逢わせてくれたこと、心から感謝します。私は世界一の幸せ者です・・・あれ?でもまだ日付変わるまで30分あるけど・・・。 なんとなく感じた違和感は風凛くんの言葉で絶望へと変わった。 「ごめんね。別れてほしい。結婚したい人が出来たんだ。本当に申し訳ない。」
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