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───頭痛い・・・気持ち悪い・・・お水飲んだ方がいいんだろうけど、動けないし・・・。
風凛くんは私と付き合う前から関係があったという私の親友・梨衣乃との間に子どもが出来、彼女と結婚するという。そんな彼を残して逃げるようにリゾートホテルから去った。なんて惨めなのか。絶望の先に更に絶望があるなんて知らなかった。
浦島太郎以上にもてなされたけれど、玉手箱を開けたらおじいさんになる以上にショッキングな出来事が待っていた。こんな仕打ちを受けるくらいならおばあさんになった方がまだマシに思える。
───人に迷惑をかけないように生きてきたのに・・・前世でよっぽど悪いことしたのかな・・・。
梨衣乃とのことを聞くことは心がえぐられるようで出来なかったけれど、どうして別れようと思っているのにこんな高級ホテルで誕生日のお祝いをしたのか、それだけは聞くことが出来た。
『君には申し訳ないことをしたから、せめて最後にいい思い出を作りたかったんだ。』
まるで自分に酔っているかのようなドヤ顔で発せられたその言葉を聞いて、元々凍りついていた心が暗闇の底に落ちて粉々に砕け散るのを感じた。
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