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「え!?」
「彼は焼き肉大好きで彼女と行きたいけど、彼女は肉が苦手だからって。あの時あたしが言った『恋人がいても気になる人いたら一緒に過ごしてみたらいい。』ってのはあくまでもあたしが考えてることね。」
「そうだったんだ・・・。」
「あたしは自分の彼氏が他の子と一緒に過ごしても平気だけどさ、皆がそうじゃないんならそういうことはしないようにするわ。焼き肉ももう行かないし。」
「よかった・・・。」
「あんたさ、普段はビンタとかしないんでしょ?」
「え?」
「わかんないけど、友達が酷いことされたからキレてる、ってだけじゃないように見えたから。何があったかは知らないけど、つらかったんだね。」
梨衣乃の表情は女神様のように美しくて慈愛に満ちていた。目頭がツンとして慌てて目の前のビルの特徴的な形の窓に集中する。
───元の世界で梨衣乃が私から風凛くんを奪ったりしなかったら、いい友達でいられたのに・・・。
去ると決めたこの世界は私にとって都合のいい世界だった。風凛くんも梨衣乃も私を裏切っていない。私は何も失っていないのだ。
そう、ミコトくんのことさえなければ・・・。
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