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「「あ・・・。」」
私と風凛くんの声がハモった。
───風凛くんが異動してからは社内で偶然会うことなんてなかったのにな・・・。
カフェテリアとは別に各階の端、階段のところに設けられた、自販機と丸テーブルが3つほどある休憩スペース、そこで先日別れたばかりの風凛くんと再会してしまった。
オフィスの電話も自動応答に切り替わった定時後、私が座って休憩しているところに彼が飲み物を買いに来たのだ。窓の向こうには綺麗なオレンジ色の夕焼け空が広がっている。
「あ、あ、えっと・・・。」
何を話したらいいのかと目を泳がせているとテーブルの上にある社名入りカレンダーに目が留まる。
「あ!・・・あのね、ここでは一年は372日だけど、私がいた世界では、一年は365日なの。」
「・・・へえ、そうなのか。」
風凛くんの表情と口調には戸惑いが見える。きっと私もそうなのだろう。
「ここは毎月31日まであるでしょ?でもあっちでは30日までしかない月もある。特に2月は基本的に28日までしかないの。」
「え・・・じゃあ叶未の誕生日は・・・!?」
「四年に一度、うるう年っていって、2月29日がある年があるの。だから私、まだ7回しか誕生日迎えてないんだ。」
「なんでそんなややこしいことになってんだ?」
「紀元前とかの話だから、正確にはわかってないんだけど、昔は一年は10ヶ月しかなくて、今でいう1月と2月は農業をやらないから日付が割り振られてなかったんだって。その後日付が割り振られて、2月は一年の最後の月になった。その時1年の日数は355日しかなかったの。そのままでは季節と日付がずれていっちゃうから、最後の月の2月で調整をした。それが今も残ってる、ってことみたい。」
「ここと叶未がいた世界では、地球が太陽の周りを一周するのにかかる時間が違うってことなんだな。」
「でも環境は同じなんだから、太陽と地球の距離は同じで、公転の速度が違うってことなのかな?って思って。あ、1日が24時間なのは一緒だよ。」
「不思議だな。そんな風にいろんな世界があること。」
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