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「うん・・・私、どうしてこの世界に来たんだろ。何か意味があるのかな・・・。」
「俺と出逢うため・・・」
「!」
「や!なんでもねー!悪り、忘れて!」
「・・・。」
───忘れられないよ・・・!
「えーっと、何飲もーかな!やっぱおしるこだな!」
風凛くんが慌てた様子で自販機でおしるこを買う。あちらの世界の風凛くんは『小豆が缶の中に残るから嫌だ。』と言って買うことはなかったドリンクだ。
「小豆が缶の中に残るから嫌だ。」
「え?」
「叶未はそう言って飲まなかったんだよな、これ。」
「そうなんだね。私は好きだけど。」
「マジ!?じゃ、一緒に飲もうぜ!」
風凛くんは少年みたいに嬉しそうな表情をした。この数日で、あっちの世界で3年も付き合っていたのに見たことがなかった風凛くんの表情をたくさん見ている。
缶を開け『先飲めよ。』と渡してくれる時にお互いの指先が触れた。すると温かい缶を受け取った私の手に風凛くんが自分の手を重ねる。
「風凛くん・・・?」
「つい一昨日、決めたことだけど、やっぱりさ・・・。」
「こんなとこでイチャイチャしてたらバレちゃいますよ?」
神妙な様子の風凛くんの言葉に被せるように突如話しかけてきたのはミコトくんだった。
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