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───あれは、私が破いたカレンダー・・・だよね。
カメラロールに入っている身に覚えのない写真の中で、ごみ箱近くに落ちていたのは私が2月29日に乱暴に破り捨てたカレンダーに違いなかった。
風凛くんとホテルに宿泊した28日及び彼に絶望し酔い潰れていた29日の欄には、いつも貼るお花のシールは貼られておらず、その後は余白、つまり29日で2月が終わっているカレンダーだ。
───ということはあの写真は、私が元いた世界で撮られたもので、そこに写っている風凛くんは私が付き合っていた風凛くんということ・・・!?でも、彼は梨衣乃と・・・。
あの最悪な誕生日は随分と昔のことに思えた。この世界には私を愛してくれる風凛くんがいる。元の世界の彼はもはや過去の人みたいに思えた。
───でもあの写真はここともあっちとも違うまた別の世界で撮られたもので、その世界の私が破り捨てたカレンダーってことも有り得る・・・もしかしたら茉結みたいに別の世界でも風凛くんに裏切られて・・・。
駅から会社まで歩きながら考え込んでいた私は、気づかぬうちに石畳が敷かれ両脇に緑が植えられた遊歩道に入っていた。ところどころにベンチもある。
「おはよう。」
後ろから呼び止められ一気に思考の中から現実に引き戻される。
どんな顔をして振り向いたらいいのかわからないまま、体を声の主の方に向けた。
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