3月5日(木)

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「すぐに決められることじゃないと思う。ただ俺はいずれにせよあの叶未とは別れる。だから、元の世界に戻るまででも一緒にいてほしい。頼む・・・お前のことが好き過ぎておかしくなりそうなんだ。こんな気持ち初めてだ。」 「風凛くん・・・。」 別の世界で生きていこうとするなんておかしい、風凛くんとこの世界の私は正式に別れたわけではないんだし、という理性と、この世界でここにいる風凛くんと幸せに暮らしたい、という気持ちが胸の中でせめぎ合う。 ───茉結は、元の世界に戻るのは難しいと思う、って言ってたな。それに、世界間を移動することで他の世界にいる自分達が入れ替わっちゃう、とも。それが正しければ、私が元の世界に戻ることで、どこかの世界で幸せに暮らしている私が別の世界に行ってしまって、大切な人と離れてしまうようなこともあるのかも・・・というかそもそも今回私がこの世界に来たのは私自身が原因なのかな・・・もしかしたら他の世界の私が移動したからなのかもしれない。 もしあの写真が私が元いた世界なら、あそこに写っていた別の世界から来た私は梨衣乃から風凛くんを取り戻したということになるのだろうか。それとも同時に関係を持っているのだろうか。 ───同時に関係・・・。 その言葉にギクッとなる。この私自身もミコトくんに触られ動画を撮られた。元々ここにいた私の動画を風凛くんにシェアされるのを阻止する為とはいえ・・・その事実を風凛くんに伝えなければ彼と一緒にいてはいけない気がする。 ───でもその為にはあの私とミコトくんとの関係を風凛くんに伝えなくちゃいけなくなる・・・そうしたら風凛くんだけでなくアリサまで傷つけることになる・・・でもアリサはあんなことするミコトくんとは別れた方がいいと思うけど。彼女なら他にもたくさん・・・。 「朝から悪い。言いたかったのはそれだけだから。俺、先行くわ。気をつけてこいよ。」 風凛くんは私を離すと小屋の向こうの遊歩道に戻っていった。 私の体に温もりと彼の感触を残して。
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