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ほどなくして『うわああああぁぁ~・・・。』
と初めて聞くミコトくんの情けない声が聞こえてきて、ドアがガチャッと開く。
「早かったわー。」
髪ひとつ乱れていない梨衣乃がつぶやきながら出てきたので『何したの!?』と声をかけると梨衣乃の社内スマホが鳴った。『タッチペン、ありました。あ、今いらしてるんですか?すぐ戻ります。』と相手に返して通話を終えた。
そのままツカツカと去ろうとするので『梨衣乃!』と呼び掛けると、くるっと振り返り『何があったのか知らないけどもう大丈夫だと思うよ。』と言って階段の方に歩いていった。
恐る恐る会議室を覗くと、あられもない姿のミコトくんが放心状態で床にぐったりと座り込んでいる、というシュールな現場を目にしてしまって衝撃が走る。
───ど、どういうこと!?
そう思っていると私の社内スマホが鳴った。『叶未さん、金子です。お電話なんですが回していいですか?』グループ付きの派遣さんからだったので『あ、お、お願いします。』と言って電話を受けながら自席に向かった。
ミコトくんから『動画と写真は全て完全に削除した。他のところには保存してない。心配なら調べてもいい。君とはただの同期の関係に戻る。』とカメラロールのスクショ付きのメッセージが来たのはその夜のことだった。
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