239人が本棚に入れています
本棚に追加
「それらしきものはなかったね。」
「ありがとう。付き合ってくれて。」
「ううん。全然。」
茉結と一緒に誕生日の日にお酒を買った酒屋さんに行ってみたけれど、特に変わったものはなかった。何の変哲もない普通のお酒こそそれなのかもしれないけれど・・・。
「他に手がかりになりそうなのは、茉結が乗ったクルーズ船だね。」
「うーん・・・でもまたあの外国人男性が乗ってて会えるって可能性は限りなくゼロに近いよ。個人的に持ち込んだお酒みたいだったから、クルーズ船の会社に問い合わせてもわからないだろうし。」
「そうだよね・・・。」
茉結は渋い表情になった。私も同じ顔をしているのだろう。
「そもそもクルーズ船て一泊じゃ終わらないもんね。仕事何日も休むなんて出来ないし。さっきの酒屋さんのお酒を地道に一種類ずつ試していくしかないのかな。」
「気の遠くなる調査だね・・・。」
今度は茉結は遠い目をしている。
「うん・・・他に出来ることと言ったら『むぅ博士』にDM送るくらいしか・・・。」
むぅ博士というのはつぶやきSNSでパラレルワールドについて語っている人のことだ。首から下が写っているアイコン写真ではロリータファッションに身を包んでおり、つぶやきの口調も『僕は~なのだ。』という感じで、ブライベートな投稿では見た目が可愛らしいスイーツを食べに行ったりしている。
「う~ん。返事くれそうには思えないけどね。」
茉結に言われ『そうだよね。でもダメもとで送ってみるよ。』と返していると見覚えがあるものが目に入った。
最初のコメントを投稿しよう!