食べ放題

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 思いっきり蹴った小石が、電柱に跳ねて戻ってきた。ちっとも気が晴れやしない。  今日も山岸のやつに足をひっかけられた。派手に転んだ俺を見て、山岸の取り巻きがクスクスと笑う光景がフラッシュバックする。  デブで根暗でろくに反抗もしない俺を、クラスの連中はこぞって馬鹿にしてきやがる。  担任に言ってもろくに話を聞いてくれない。あのおばさんは面倒事が嫌いだから、仲良くしなきゃと言うだけで、何も行動に移さないのだ。  担任のおばさんも、冷ややかな目で見てくる女子どもも、乗っかってくる取り巻きも、山岸も、みんなみんな消えちまえ。  思い出したらまたムカムカしてきて、さっきよりも一回り大きい小石を勢いよく蹴りつけた。転がった石ころが、駐車されていた軽トラの近くで止まる。  そのときだ。軽トラの下から緑色の何かがにゅっと出てきて、石ころを奪い取った。  あんまりに早くて見間違いかと思った俺は、膝をついて軽トラの下を覗き込んだ。  そこには、緑色のにゅるにゅるしたスライムみたいな生き物がひそんでいた。  うわぁ、と悲鳴をあげて尻もちをつく。スライムは軽トラの下から這い出てくると、興味深そうに俺の周りをぐるぐるとうろついた。  恐る恐る触れてみる。ぶにょっとやわらかくて、ひんやり冷たい。癖になる感触だ。  人差し指でぶにぶに押し続けていると、スライムが逃げ出した。そのままどこに行くのかと思いきや、何と体をのぼってきて、ランドセルの隙間につるりと滑りこんでしまった。  中を見ると、ほとんど液体みたいに収まっていた。濡れていなかったので、まぁよしとしよう。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!