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思いっきり蹴った小石が、電柱に跳ねて戻ってきた。ちっとも気が晴れやしない。
今日も山岸のやつに足をひっかけられた。派手に転んだ俺を見て、山岸の取り巻きがクスクスと笑う光景がフラッシュバックする。
デブで根暗でろくに反抗もしない俺を、クラスの連中はこぞって馬鹿にしてきやがる。
担任に言ってもろくに話を聞いてくれない。あのおばさんは面倒事が嫌いだから、仲良くしなきゃと言うだけで、何も行動に移さないのだ。
担任のおばさんも、冷ややかな目で見てくる女子どもも、乗っかってくる取り巻きも、山岸も、みんなみんな消えちまえ。
思い出したらまたムカムカしてきて、さっきよりも一回り大きい小石を勢いよく蹴りつけた。転がった石ころが、駐車されていた軽トラの近くで止まる。
そのときだ。軽トラの下から緑色の何かがにゅっと出てきて、石ころを奪い取った。
あんまりに早くて見間違いかと思った俺は、膝をついて軽トラの下を覗き込んだ。
そこには、緑色のにゅるにゅるしたスライムみたいな生き物がひそんでいた。
うわぁ、と悲鳴をあげて尻もちをつく。スライムは軽トラの下から這い出てくると、興味深そうに俺の周りをぐるぐるとうろついた。
恐る恐る触れてみる。ぶにょっとやわらかくて、ひんやり冷たい。癖になる感触だ。
人差し指でぶにぶに押し続けていると、スライムが逃げ出した。そのままどこに行くのかと思いきや、何と体をのぼってきて、ランドセルの隙間につるりと滑りこんでしまった。
中を見ると、ほとんど液体みたいに収まっていた。濡れていなかったので、まぁよしとしよう。
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