幸せの前に

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 幼稚園の頃から、リビングで父と母がよく喧嘩をしていた。理由はよくわからない。喧嘩が始まると、2階へ逃げ込み部屋で耳をふさいでいたから。  喧嘩の後、母はよく泣いていた。ご飯の支度はしてくれない。キッチンから食べ物をもって来れるような雰囲気でもなかった。  私は空腹をひたすら我慢していた。  学校が休みの日は一日中、何も食べられない時もあった。  ある日、泣いている母に私は思い切って声をかけた。 「お母さん、大丈夫?」  母は顔を上げて、しばらく何も言わずに私の方を見た。そしてため息をついた。 「あなたがいなければ離婚できるんだけどね」  そう言って、また泣き出した。  今から4年前、私が小学校6年生の時、母が就職した。それがきっかけとなり父と離婚することになった。  父からの養育費もあったので、そこまで暮らしには困らなかった。  母は就職してから、表情が明るくなった。忙しくて帰りが遅い日があったので、私は積極的に家事をして、ご飯もつくるようになった。  そんな私に母は感謝してくれ笑顔を見せてくれるようになった。  そして私が中学2年生になった時、母は再婚をした。  再婚相手の男性はとても優しい人で、私のことも可愛がってくれた。  母と私は幸せを手にすることができたのだ。    
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