幸せの前に

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 しかし、幸せな生活になっても私には悩みがあった。  お腹が空くと涙が出てきてしまうのだ。  母が再婚してしばらくたった時、遅刻しそうだったので朝ごはんを食べずに学校に行った。  2限目から空腹を感じるようになった。その時、心がざわざわするのを感じた。そして、のどがつまったようになった。このままでは泣いてしまう。  私はお腹が痛いと嘘をつき、トイレに駆け込んだ。気がゆるみ涙が出てきた。気を落ち着かせようと思っても、心がざわざわしたままだ。  そしてあの時の記憶がよみがえってきた。  父と母の怒鳴りあう声、泣いている母の姿、そして「あなたさえいなければ」という母の言葉。空腹の記憶はそれらと結びついていた。  それから、私は徹底的にお腹が空かないようにした。朝ごはんは多めに食べるようにし、夕ご飯も必ずご飯を2杯食べた。学校にもこっそりお菓子を持っていきばれないように食べた。  ご飯をたくさん食べるようになった私を母と継父は「お腹が空く年ごろだね」と言って、心配はせず、喜んでくれた。  
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