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ホットケーキが運ばれてきた。
そのホットケーキは真ん中にバターがおかれ2段重ねで、メープルシロップがたっぷりかかっていた。子どもが理想のホットケーキとして描いていそうなホットケーキだ。
「益田さんが何で泣いたかは聞かないけどさ」
佐々木君はナイフでホットケーキを切りながら言った。
「このホットケーキ食べたら、嫌なこと一瞬忘れるよ。温かいうちに食べて」
私は一口に切ったホットケーキを食べた。その瞬間、ふわっとした甘い空気が口の中に広がった。
「おいしい」
「良かった。自分がおいしいと思うもの人がおいしいって言ってくれると幸せな気持ちになるよな」
幸せ、もしかしたら、私は今の幸せを素直に受け入れていないのかもしれない。また、壊れてしまうのではないか、失ってしまうのではないか、そんな気持ちを気づかないうちに抱えていたのかもしれない。
空腹は過去を思い出させるだけではなく、そんな気持ちを大きくするきっかけになっていたのだ。
今の幸せとしっかり向き合えた時、私は空腹でも泣かなくなるのだろうか。
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