女神様のお部屋

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 モルクを構成していた物質は、そのすべてが光の粒子となってレオノラに流れ込んでいく。部屋に立ち込めていた暗い瘴気も同様だった。女神の体は輝きを取り戻している。神器も石板の形を取り戻していた。一方、フィアはその様子をぐったりと地に伏せて眺めていた。着地と同時に酷い脱力感に襲われ、そのまま崩れ落ちた結果だった。 「ありがとう、掃除屋さん」 「どういたしまして、女神様」  気合いを入れて立ち上がるとレオノラが支えた。 「どうする?このまま帰る?」  レオノラは顔を覗き込んで聞いてくる。 「もう、依頼は完了してるからな…」  フィアは目をそらす。復活したレオノラは神々しいうえに美人が過ぎる。目に毒というものだった。レオノラは半ば抱きつくようにして、フィアの耳もとに顔を近付ける。 「また、なんかあったらよろしくね」  囁く声は甘いが、同時に聞き捨てならない台詞でもあった。 「ふっざけんな!今後はちゃんと自分で掃除しろ!もう二度と呼ぶんじゃないぞ!」 「はーい、善処しまーす」  反省した様子の無い女神の背中に掃除屋は蹴りを入れる。多分、これから死ぬまで、何らかの厄介ごとに巻き込まれ続けるんだろうなと予感しながら、それでもフィアは今このときの勝利に、少しだけ酔いしれることにした。
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