女神様のお部屋

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 しかし、そんな幸せも長くは続きませんでした。女神が捧げ物を開けたときのリアクション、その一喜一憂は、そのまま種族の力の差となっていきました。女神を喜ばせた者がより富み、そうでないものは貧する。その積み重ねは遠からず争いを招きました。より良い捧げ物をするために他種族を襲う。襲う者も襲われる者も、口々に女神の名を叫びます。 「この国に生まれて良かった」 「もっと強い力をお与えください」 「僕はこの種族であることを誇りに思います」 「なぜ私たちは愛してくださらないのですか」 「下賤な者は滅ぶべきなのです」 「食べ物が足りない、子どもが死んでしまう」  神器を通じてたくさんの祈りの声が届きます。次々と流れる感謝と怨嗟。部屋に渦巻く通知の鈴の音と民の声。こんなはずじゃなかった。どこで間違えたんだろうか。女神は頭を抱え震えました。彼女には特定の種族に肩入れした覚えが無いのです。みんな等しく幸せであれと思うことはあっても、争え奪えと思ったことは一度もありませんでした。捧げ物も極端になっていきました。黄金や宝石、豪華な食べ物が届く一方で、わずかばかりのパンや空っぽの木箱が届きます。もう限界でした。女神レオノラは神器をミュート設定にして、遠くへ放り投げてしまいました。もう見たくもありません。しばらくしたら、元のような世界に戻ってくれる。戻って欲しい。そう祈るようにして、足を抱えて座り込んでしまいました。
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