女神様のお部屋

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 光を抜けると頭より先に体が動く。フィアは相手の背後に回り両手を捻り上げていた。 「ねぇ、なんで?私、依頼人よ?」  早くも泣きべそをかく相手にフィアをは一切動じない。 「まだ依頼を受けてないし、何より俺はアンタに拉致されているようなもんだからな」 「アンタじゃない!レオノラ!女神よ、女神!」  自分を女神だと言う奴は初めてだった。麻薬でもやってるいるのだろうか。しかも王都の聖堂に祀られている神の中にレオノラなんて奴はいなかったはずだ。胡散臭いにも程がある。痛々しいにも限度がある。 「自己紹介ありがとう。じゃ、早速だけど元の場所に戻してくれるかな」 「無理」 「怒るぞ」 「仕方ないでしょ、無理なもんは無理なのよ!さっきので使い切っちゃったのよ。あなたのこと調べて、ここまで飛んで、それで終わりだったの。カツカツだったのよ!」  ギャーギャーと喚くレオノラを前に、フィアはあれこれと思考を重ね、これ以上は意味が無いと結論づけた。もし罠にはめる気なら自分だけを転送すれば済む話だ。それが出来ていない時点で変だ。フィアはレオノラの拘束を解いた。 「ここは?」 「多分、神域」  固まった関節をほぐすように手をぶらつかせてレオノラは答える。 「不確かなのか?」 「見た目が変わってるから、自信が無いのよ」  自信たっぷりに言われてしまっては追及の仕様が無い。フィアは呼吸1つで思考に見切りをつける。 「仕事の内容は?」 「だから、掃除って言ってるじゃない。ここを進んだ先に私が失くしたものがある。私じゃ見つけられない。だから手を貸して」 「何を失くしたんだ、いったい」 「簡単に言えば力ね。女神としての力。今の私は女神だけど女神じゃないの。それから神器も壊しちゃったから直さなきゃ」 「協力できる要素が全然無いし、そもそも俺はレオノラさんが思ってるような掃除屋では無いと思うんだけど」 「レオノラで良いわ。大丈夫、フィアが適任なのよ。すぐに分かるわ」  そう言うとレオノラは転送に使った石を取り出して掲げた。辺りがぼんやりと明るくなっていく。それにつれて眼前に広がっていく光景にフィアは言葉を失う。目の前には夥しい数の木箱が転がっていた。足の踏み場なんか一切無かった。
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