3人が本棚に入れています
本棚に追加
「佐藤がいいんじゃねえか?」
男子生徒の一人が、笑いながら私の名を口にした。
中学校での出来事。クラスの学級委員の選出である。
書記が私の苗字を、黒板に書いた。
ほかにも五名ほど候補が上がり、六名で学級委員の座を争うことになった。
内向的で何事も受身だった私は、これまで学級委員の候補に上がることなど一度もなかった。
「佐藤が学級委員になったら、おもしれえな」
他の男子生徒が、私を嘲笑するようにそう言った。
男子生徒は単に、選挙に意外性を求めただけなのかもしれない。
奇しくも私に多くの票が入り、学級委員に選ばれてしまった。
お手なみ拝見、というところだろうか。
女子生徒・Mは、この結果が気に入らなかったのだろう。
「あなたが学級委員なんて、私は絶対に認めないから!」と言った。
そして、黒板にある私の名を消した。
私は、人前に出てリーダーシップをとるタイプではない。
しかしMがなぜ、そこまで私のことを否定をするのか皆目わからなかった。
この一件に限らず、Mの発言力は圧倒的に強かった。
たいがいの女子生徒は、Mの言いなりになった。
けれど内心は、どう思っていたのかは不明である。
私も尋ねる気はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!