いつか雪は止む

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 冷蔵庫からビールを出そうとしたとき、見覚えのある字で書かれたメモを見つけた。 『まずは手洗い、うがいを!!』  ミコは、ふぅーと息をつく。  違和感の正体がわかったのと同時に、なぜミコの行動を知っているのか、親の感覚は子どもが大人になっても、生き続けていることに驚かされる。  その言葉に従うように、ミコは手洗い、うがいを済まし、冷蔵庫に貼ってあるメモを外し、ビールを取る。  『ビールの前に、ご飯!!』  ミコはビールに貼ってあるメモを見つけ、冷蔵庫のなかに入っているタッパを見つけた。  開けてみると、そこには肉じゃがが入っていた。  ちょっと味見をしてみる。 「甘い」  ミコの頬が緩む。  昔から、母が作る肉じゃがが好きだった。  普通の誰にでも作れそうな肉じゃがだけど、ミコが作っても同じ味にはなぜかならなくて、定期的に母が作るものが食べたくなる。  そういえば最近実家に帰っていなかったなと、思い出す。  レンジに入れようとすると、レンジに貼ってあるメモを見つける。 『味噌汁が鍋に入ってるから、肉じゃがと同時に温めて』  ミコは味噌汁が入っている鍋を見つけると、そのまま火にかけ、肉じゃがをレンジで温める。 「いい匂い」  いつぶりだろう。  ただお腹が空いて、それを埋めるための食事だった。  ご飯を食べる前に”いい匂い”だと感じたのは、久しぶりのような気がした。   温め終えると、ミコは湯気をまとっている肉じゃがと味噌汁をテーブルに並べた。 「……いただきます」  一口くちに含めば、身体がすーと温まる感じがした。  こんなはずじゃなかったのに。  つまらない大人になってしまったな。  一口食べるたびに温まる身体が、涙腺を刺激する。  ”生きたい”と、身体が全力で伝えてくるのに、それに応えれるかが分からない。  なんて情けないのだろう。  
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