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流れてくるものをふこうとミコはティッシュに手を伸ばす。
そこにメモを見つけた。
『雪の良いところは、いつか絶対に止むところだ!!なんてな』
ミコはふっと笑う。
「なんてなってなんだよ」
どこかで聞いたことのあるようなセリフを引用したのは、きっとミコの性格を知ってのことだとわかる。
褒められたいはずで頑張っているのを認めてほしいくせに、”大丈夫?”と優しくされると、”大丈夫”と答えてしまう。
”元気?”と言われると、心配かけたくないから”元気”と嘘をつきたくなる。
”無理しないで”と言われると、きっと泣きたくなる。
でも、それを見せたくなくて、きっと強がってしまう。
ミコは流れる涙を拭い、ご飯を食べ終えた。
そして、スマホを手に取る。
なんコールめかで、聞き慣れた声が聴こえてくる。
「メモ、ありすぎなんだけど」
ミコが言うと、母はどや声で言う。
「天使みたいでしょ」
ミコが吹き出す。
「天使は、そんなおばさんじゃないでしょ」
「あら、誰がそんなこと決めたのよ。こんな優しくておちゃめな天使に愛されるなんて、あんた幸せものよ」
「言っている意味わかんない」
ミコが笑うと、母は少し安心したように言う。
「……肉じゃがと味噌汁、おいしかったでしょ」
「……おいしかった」
温かいと感じれる毎日が、いつか来るのだとしたら。
もう少し。
もう少しだけ。
幸せがどういうものかを知っているから。
嘘をつかなくても、強がらなくても。
きっと、大丈夫だ。
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