己を守る術

17/17
前へ
/55ページ
次へ
切った髪が首の周りに残っているのか、チクリと痛む。気になって触ったら痒みが出てしまい、気が狂ったみたいに首を触ってしまった。 「何やってんだよ。仕方ねぇな。 世話が焼ける。」 タオルを片手に社長が首周りを払ってくれた。 「お前さ、少し体鍛えろ。 これでは殺される。 蓮、華をトレーニングルームに連れてけ。 俺はこのあと、人と会う予定がある。 今日中に、一度、事務所に連れて来い。」 トレーニングと言う言葉に、逃げも隠れもできない事がわかる。 もう二度と、これまでのような生活ができないと察する事ができた。 この社長のことは何も知らないし、わからない。 私とは別世界の人だ。 でも、わかる。絶対服従。 それは、社長と蓮を見ているとわかるからだ。 裏切ったら最後、本当に命がない。 師弟でもない。友達でもない。 兄弟姉妹みたいなものでもない。 私には理解の難しい関係の始まりだ。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加