みやび ①

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みやび ①

「つ…強く…ついて…奥までもっと…」 筋肉質の大きな体が僕の両足を持ち大きなモノを腰に打ち付けてくる。 「もう…いく…いっちゃう…アアッ…」 「くっ…」 覆い被さって僕の晒した乳首に強弱をつけて吸い付いてくる逞しい身体に自分のモノも擦り付け、さらに快楽を味わいながらいき果てた。 「はぁ…はぁ…」 身体の温もりはすぐに引き剥がされ容赦なく相手のモノも引き抜かれる。 疲れ果て、晒された裸の僕だけが取り残され、寒さを残した春先の室内はまだ少し肌寒くて足元の肌布団を引き上げた。 「お前は容赦ないよね…」 上がる息を整えながらいつもの言葉を投げかける。 「すみません、乱暴でしたか?」 「そんな事は言ってない、今日もよかった」 相手は服を素早く着込んで部屋を出て行こうとする。 「ほんと終わったらすぐ出ていくんだね、情緒も何もない…」 「仕事がありますので、不快にさせたらすみません」 「謝ってばっかだな、やっぱお前…嫌い」 布団を頭まで引き上げて彼の顔を見えない様にする。 なんだよ、少しは僕を暖めてくれてもいいじゃない… 不貞腐れて出ていくのを待っていると、ベットが軋み布団の上から手の温もりを感じた。 「申し訳ありません、みやび様」 頭をクシャとかき回して部屋を出ていった。 「そんなとこも大嫌い…」 静かになった部屋に布団を被った僕は1人になると悲しくて涙が出た。 「寂しいよ、琉兄ちゃん…」 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 昔から僕の家には絶えずたくさんの人が出入りしていた。 代々受け継いだこの広くて大きくて古臭い家が僕は大嫌いだったけど、父や兄達はまた違った考えを持っていたようだ。 2つずつ違う兄達と年々身体の大きさや顔つきが変わっていくと、嫌でも自分はΩなんだろうな、と実感させられ、検査結果が出た時は落胆もせず、政略結婚に使われる自分の未来しか想像できなかった。 ベッタリした家族ではなかったけど、僕がΩと分かってからも皆んな僕を愛してくれてとても可愛がってくれている。 ただ僕の家は戦前から続く政治家一家なので、αの兄達は勉強に忙しく、父も選挙や党役員の仕事でほとんど家には帰ってこないし、母も地元の選挙区を守るために奔走しているためこのただ広い家にはいつも僕1人のことが多かった。 1人といっても使用人達や祖母は居るので寂しい訳ではなかったが、それでも大人しかいない状況は僕にとって良くはなかったようで、それを心配した母が”遊び相手”として住み込みの庭師の子供を僕専属の世話係として付けてくれた。 彼は僕より3つ年上で、上の兄よりひとつ下、下の兄よりひとつ上という年齢だった。 「初めましてみやび様、内田琉生といいます」 差し出された大きな手を祖母の足元に隠れて眺めていた僕は恐る恐るその手を握り返した。 「さんとうみやびです、よろしくおねがいします」 3歳になったばかりの僕は兄達ともあまり関わったこともなかったので、その当時はたとえ3つ違いでも相手は大きなお兄ちゃん、と言う感じだった。 彼も兄達と同じで年齢よりは大きな体つきや端正な顔立ちだったので、その当時からαで間違い無いだろうと言われていた。 「りゅうきおにいちゃん…」 彼は僕の前に膝をつきニコッと笑った。 「はい、琉生でもりゅうでもみやび様が呼びやすい呼び方でいいですよ」 少し癖のある薄茶色の髪と瞳が太陽の光を浴びてキラキラ輝いている。 「じゃあ、りゅうにいちゃん!」 そう言った僕の手をとって彼はまたニコッと笑いかけてきた。 その時の琉生の笑顔が今でも忘れられないほど印象的なもので、僕は初めて”好き”の感情に胸が締め付けられるほどときめいてしまった。 ☆☆☆☆☆☆☆☆ 「もうやだ!勉強したくない!」 出来のいい兄達とは違い、その部分では血を引いていないのかと思うほど頭が悪く、幼稚舎から大学までエスカレーター式で上がれる学校に通っていた僕。 我儘ばかり言うので次から次へと家庭教師が辞めて行く。 見兼ねた琉生が世話係だけでなく家庭教師としても働いてくれるようになった。 「ここまで頑張って下さい、じゃないといくらエスカレーター式の学校と言えども中学には上がれませんよ?」 「うううっっっ…」 「わからないところがあればちゃんと教えますから、頑張りましょう、頑張ったらいつもの”アレ”してあげますから、ね?」 「うっっっっ…やだ…やだけど…ご褒美欲しいから頑張る…」 「いい子ですね、みやび様」 こう言う時は必ず僕の髪をくしゃくしゃっとかき混ぜる。 僕はこれがなんとなくして欲しくて我儘を言ってるところもあったりする。 なんだかんだこうして最後まで付き合ってくれて、面倒を見てくれる琉生、彼のおかげで僕の成績は学年でも上位に上がることができた。 「最後までよく頑張ったね、おいで」 ソファに座った琉生が両手を大きく広げて僕を呼ぶ。 吸い込まれるようにその腕の中に抱き締められる。 「みやびはいい子、綺麗だし可愛いし、大好きだよ」 僕は親にこんな事をしてもらった覚えがない。 可愛がってくれるが、皆んな忙しく、どこかよそよそしい。 身体の温もり、本当の愛情、初めてギュッてしてもらった時は恥ずかしさでいっぱいだったけど、今は”ご褒美”としてギュッとしてもらう。 この瞬間がとても幸せなんだ、琉生限定なんだけど… 「僕いい子?」 「うん、とってもね」 中学2年生になって身体が一段と大きくなった琉生の背中に手を回して僕からもギュッってした。 ずっと一緒に居たいな、家族よりも誰よりも僕の側にいてくれる、大好きな琉兄ちゃん… 「もっとギュッってして」 髪を優しく撫でる大きな手。 いつまでも撫でていて欲しい。 それから僕に、将来について親から言及されるのは中学に上がってすぐのことだった。 ”絶望” まだ子供だった僕にこの言葉が重くのしかかったのだった。
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