第三夜 嫉妬に濡れた尋問

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指の付け根まで深々と突き刺さった直江の奇行に、視界が明滅するが仕方がない。 雪乃の方こそ、直江の右肩に左手の爪を痛いほどに食い込ませている。 「ァア…なお…ぇ、動かさな…ィ…でッ」 バラバラと三本の指を自在に操る百戦錬磨に、雪乃の声ははしたない蜜音の中に混ざっていく。もう声がどうこうの問題ではなく、歯形が付いた右手さえも直江の肩をつかんでいなければならないほどに、雪乃は立ったまま乱れていた。 「いつも以上に感じるだろ?」 「ぁ…~~ぁっふぁ…ァぁ」 「聞いてんのか?」 パシパシと尻を叩かれ、指で虐げられ、さげずんだ眼差しで見上げられることさえ快楽に変わるなど、自分が獣か何かにとりつかれたとしか思えない。ぐちゃぐちゃと兼景に注ぎ込まれた精液をかき混ぜるように指を深く突っ込んでくる直江に、雪乃はたまらず懇願の声を上げていた。 「ァ…直江ぇ~ッあ…はぁイカセテ…願ぃ」 「そうやって兼景様にもねだったのか?」 「チガッ…ぁ…ふぁ…ヒッぁ…ぁ」 「ここに子種を注いでくださいって懇願したんだろうが?」 「してな…ィぁあ…してないぃ…ッ」 「雪乃、本当のことを言ってみろ」 「お願イッ…はぁ…イキたッぁ…直江ぇ」 終わらない愛撫。昇華する寸で何度も止められ、そのたびに狂いそうなほどの情欲が湧き上がってくる。 他に何も考えられない。 めちゃくちゃに犯してイかせて欲しい。 盛りのついた雌犬のように腰を振り、嬌声にあえぐ声が止まらない。もうとっくに兼景に注ぎ込まれたものは飛び散ってしまったのではないかと思うほどかき乱され、滴り落ちる愛蜜の行方は雪乃の足だけではなく直江の腕までも陰湿に濡らしていた。 「何回気を許した?」 「~~っ、ふぁッ…ぁ…はぁ…っ」 「こんなに勃起させやがって、感じることだけは昔から立派だな?」 「ッ!?」 ビクリと雪乃がのけぞる。 「どうした?」 元凶は自分だという自覚があるくせに、直江の愛撫は緩まない。ただ足を広げて立つ雪乃の前で、着衣も乱さず座ったままの直江の手のひらだけが、器用に旋律を奏でているなど誰が想像できるだろうか。 がくがくと、雪乃の膝が震えだすのをどこか嬉しそうに眺めながら、直江は技巧を休めようとはしなかった。 「すげぇ敏感だな、雪乃」 乱れる姿に興奮したのか、直江の息が舞い上がる。 「やッ…ひっ…ぁアッ…はぁ」 「しっかり立ってねぇと、仕置きにならねぇだろうが」 「そっ、ヤッっ…だめ…ぇ」 絶妙にずらされる昇華への瞬間が、押し寄せては遠のき、遠のいては押し寄せてくる波動に雪乃の声が嘆願を発していた。 「ゆる…し…て…ッ」 許してください。逝かせてください。 思わず赤面してしまうであろう言葉の羅列が口をついて感情と共に吐き出されていく。床には白濁から透明に変わり、少し泡立った濃密な液体が滴り落ちるようになるまで、直江の指技が終わることがなかった。 「アッ…ぁ…なお、ぇ」 どさりと支えを失った雪乃が崩れ落ちる。それをどこか嬉々とした表情で見下ろすように立ち上がった直江は、眼下に転がる生殺しの蛇を見つけてぺろりと舌で唇を舐めていた。 「全部掻き出されたか、最後まで確認してやらねぇとな」 服を脱ぎながら尋ねてくる直江に、雪乃はたまらず床にはいずりながら近づいていく。 「欲しい…ぁ…欲しいの…なおぇ」 「っく」 「ンッ…ぁ…~っんっ」 今度は仁王立ちする直江の秘部に雪乃が顔を寄せ、躊躇することなくそれを口に含んだ。教え込まれた方法で、口をすぼめ、指をすべらせ、のどの奥を使うように顔を前後に動かしていく。そしてとどめは、その立派なもの咥えながら潤みを帯びた熱い視線で持ち主をじっと見上げてみせた。 「本当にお前は可愛いやつだよ」 「ッ…ぁ…んっ」 後頭部を両手でつかみ、のどの奥深くまで自身を挿入した直江の腰遣いに、雪乃の瞳から涙が零れ落ちる。ただの奉仕が快感に変わることを教えてくれたのは、他の誰でもない、目の前で裸体をさらす直江だけ。 「ッごほ…~~ぁ…ぁハッ」 一気に引き抜かれたせいで、唾液と空気が混ざった湿度が雪乃の喉を襲う。その苦しさに喉を抑えて床に倒れた雪乃の体は、刹那、直江によって引き上げられていた。 「ッ!?」 嗚咽が胃の奥からこみ上げてきそうになる。 「ぁああああぁァッ…ぁ…ぁあァッ」 「どっから声だしてんだ」 「ふっ…はぁ…アッぁぁ」 立たせられるなり、背後から臀部を打ち付けるように否応なく挿入されたせいで、腰を起点に折れ曲がったくの字型の体勢に、体が支える場所を探してもがく。屈伸も出来ず、伸びた膝のまま四つん這いになる状態は、背後から突き刺した直江に主導権を渡していた。 「ヒッぁ…ぁ…アッひ」 まだ支える場所も見つからないうちから腰を打ち付け始めた直江でのせいで、雪乃は前方に吹き飛ばされそうになる体を両足で必死に支える。 「あぁ…ぁ…~~ッぁ…ヒッ…ああぁ」 足を踏ん張れば踏ん張るほど、直江に押されて前に飛びそうになる。 なんとか飛ばされないように後方の直江に体をひねって振り返り、腕を伸ばしたところで、今度は胸ごと直江に引き寄せられた。 「ンッ…~ッん…ぁ…ァんっ」 背後から立ったまま腰を突かれ、胸をもまれ、貪るように求めあう口づけが愛おしい。本能で交わること以外に何か必要なことがあるのかと言わんばかりに、雪乃は直江にされるがままに悶えていた。 「あぁ…ッはぁ…ぁっ…ァンッ」 「雪乃っ…こっちにこい」 「んっ…ぁ…ァ」 どさりと、今後はもつれるように床に倒れ込んだところで、雪乃はようやく真上に直江を望む姿勢で落ち着いた。 「ひっ…ぁァアァ…アアァッ」 楽な体勢になると、今度は気の緩んだ神経が悦楽だけを堪能するように拍車をかけて襲ってくる。 「っ…ぁ…あぁっ…ぁ」 もっとゆっくりしてほしいのに、膝の裏から手を差し込んだ直江に、太ももの裏側から押し付けられるような圧力を加えられては満足な言葉も紡げない。真上から子宮の奥深くまで侵入してくる直江の腰使いに、雪乃は何も考えられるずに従っていた。 「出すぞ」 「ッ!?」 もう、逃げる力も残っていない。 「イヤァッァァアァッアッ…だめぇッひっあぁ直江ッ」 「くっ」 「ダメッ…直江っ…中はァッ…~~ァァ」 結合部分が癒着したまま脈打つ尖端から解き放たれた直江の液体が、雪乃の深部を白く染めていく。 「抜いてぇ…ぁ…ァッ…ぁあ」 兼景の時と同様。懇願にも似た涙声を無視するように、子種は勢いよく雪乃の子宮めがけて数回にわけて放出されていく。 男たちの独占欲の証。 息も満足に出来ない苦しさと、所詮力では対抗できない無力さに、雪乃は直江との結合部分を凝視するように目を見開いて固まっていた。 「っ…ふぁぁ…ァッ」 ずるりと腰を引いた直江の一物が、ぬめりを帯びて淫乱に光っている。次いで、息をするようにゴポリと濃厚な音を立てた雪乃の膣が白い液体を吐き出した。 「あーあ、こぼしやがって」 「ひぅッ…ぁ…~~くっ」 「雪乃、嗅がされた香の効力が切れるまで付き合ってもらうぜ」 「ッ!?」 恨むなら兼景を恨めと、褒美をもらったような嬉しさをにじませた直江の声に、雪乃の意識は奪われる。覚えているのは、狂気に支配された匂いだけ。 溶けるほど混ざり合った肌の温度は、混濁の記憶の中へと吸い込まれていった。 * * * * * * * * 一方、筆頭である兼景が引き連れていった軍のせいで志路城はガラリとどこか寂しそうな気配が漂っていた。それでも先ほどから時折聞こえてくる男女の交わりの声が、楽しそうに優雅な時間を醸し出している。 「また、敦盛さまは八香の者を召されましたのか?」 耳にかすれる声を汚らわしいと悪態づきながら、不機嫌さを隠しもせずに御簾の向こうで影が問いかける。 「先ほど野菊様が召喚され、今頃情事の最中かと」 影に向かって膝をおり、顔を床に伏せたまま男は御簾越しの女へと状況を報告した。それにまた機嫌を損ねたのか、女は影を少し揺らして口を開いた。 「ふん。娘と入れ替わるようにしてやってくるとは、あの女狐め、相変わらず油断ならぬ」 「けれど、兼景様はご機嫌よく旅立たれたとか」 機嫌を取るつもりでかけた言葉だったが、思いのほか、女の機嫌は戻らない。男は顔を上げることを許されないまま、しばらく愚痴が続くであろうことを心のどこかで覚悟する。 「兼景もすみにおけぬわ。わたくしが、香の成分を入れ替えねば、確実に孕ませておったであろうに」 「なれど、その逆の配合となったことには気づかれてはおりませぬ」 「よい。娘に嗅がせた香が子を成さぬものでなくては、わたくしの気がふれるわ」 「兼景様は奈多姫と婚儀を控えた御身であらせられますゆえ」 「さよう。八香は正室にも側室にもあげぬ。大体、敦盛さまもわたくしを召された日がどれほど昔のことか覚えてもおられないでしょう。あの女狐のどこがよいのやら。息子の兼景まで八香にとられては、わたくしの心が休まらぬ」 八香に対する恨みつらみは、ただの嫉妬と思えば可愛らしい。しかし、年を追うごとに醜聞になっていく内容に、男は疲れた息を吐いてしまいたいのを我慢してジッと耳をそばだてていた。けれど、それが功を成したのか、御簾があがり女が顔をさらす。 「面を上げよ」 ところどころ白く混ざる長い髪は年を感じさせるが、見た目に気を使い、上品な仕草をたずさえたその女性は、冷めた視線を向けて優美にほほ笑む。多くいる側室の中でも群を抜いて美しいうえに、彼女はれっきとした正室に他ならない。 志路城を影で取り仕切る、もう一人の城主。 「津留(ツル)様」 顔を上げた男は、顔を半分隠し、軽装に身を包んだ若い青年。 「玖吏唐(クリカラ)、そなたに頼みがある」 妖しの笑みを浮かべて差し出された布は、手に収まるほどの大きさながら、中身を浮きだたせてずっしりとした重厚感をにおわせている。つまりは、それ相応の依頼があるということ。 「玖坂(クサカ)の城へ八香の娘を献上いたせ 」 安易に誘拐し、戦場に先だった兼景の敵将へ惚れた女を送り込めと目の前の女は言う。女の嫉妬は怖いものだと、どこか他人事のように思うのか、玖吏唐は津留の信頼に応えるようにその布を受け取ることで了承した。
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