「ごめん、クライ……」

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 クライノートはリゼルの手を胸に抱いて首をぶんぶん横に振る。 『リゼルのせいじゃない』  リゼルの隣にクライノートが座り、ペンを握って手を一生懸命動かしている。ふたりきりで空を見上げて、言葉を交わして、まるで最初に会った日みたいだ。あの日泣いていたのはリゼルの方だったけれど。この世界の中でたったひとつのものをお互いに見つけた日、リゼルの世界は色づいた。たとえ、冷たく寂しい玉座で誰にも理解されなくても、クライノートさえいてくれれば他には何もいらなかった。  だからリゼルは間違えたのだろうか。  結局リゼルにできたのは終わりの時を遅らせることだけだった。その間にたくさん失って、リゼルの手は血に汚れた。  そんな血塗れ(ひとごろし)の手をクライノートは握って、紙を握らせる。
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