はじまりのお伽噺

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はじまりのお伽噺

 箱庭の中、小さな小さな世界の中で錬金術師は空を見上げました。青くてきれいな空と白くてふわふわとした雲の向こうには神さまが住んでおられるそうです。神さまなんて見たことがない、そんなもの、きっと昔のひとが作り出したまぼろしだ。だれもがそう思っていましたし、錬金術師だって同じように思っていました。ある日、澄んだ空から天のみ使いが降ってくるまでは。  雲を突っ切って、傷ついた翼を持った白くてきれいな天のみ使いは落ちて、錬金術師の目の前に。とっさに錬金術師が伸ばした腕の中には、いつのまにか少女の姿の天のみ使いが。  錬金術師は天のみ使いを大事にしました。たいせつに、たいせつに、天へかえってしまわないように黄金の鎖で天のみ使いの手も足もかたい地面に縛り付けました。
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