「ごめん、クライ……」

7/11
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
“わたしはね、はじめてリゼルに会ったとき、わたしを創った王さまが帰ってきたんだと思ったの。王さまはわたしを創ったのに、生まれたばかりのわたしじゃなくて、違う誰かを見ようとしてた。だから、できそこないのわたしに絶望してた。そんな王さまが、わたしをやっと見てくれて、名前をくれたと思ったの。でも、違った。リゼルは最初から、わたしを見てくれた。わたしの願いを叶えてくれた。ほんとうは、リゼルの方が苦しかったのに。ねえ、リゼル。ずっとずっと言いたかった”  ──ありがとう、って。  けれど、もう、その言葉がリゼルの心を震わせることはない。伝えるには、遅すぎた。リゼルは紙を見つめ、返す言葉を見つけられずに沈黙する。きしきし、と水晶に変わってしまった身体の奥が軋む音がした。そんなリゼルをそっと抱きしめたクライノートの体温はリゼルには熱かった。  それでも、まだ大丈夫。まだ、おぼえている。ぼくはだいじょうぶ。 「リゼル(ぼく)はクライの側にずっといるよ」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!