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「おまえは正しい王になるんだ」
陽光の下を歩く。きらきらとした暖かい日差しに打たれるのは初めてだ。喜んでもいい状況なのに、リゼルの足は鉛のように重たかった。
「陛下、玉座はこちらでございます」
ずしりとした冠を戴いて、紫紺のローブを引きずる。白い司祭服を纏った男、セレスティアン・エルピスの後に続いて王になった少年は自分の行くべき場所へと向かう。
白亜の城の最上階。錬金の王の姿かたちをした少年を多くの人間が息を呑んで出迎えた。羨望、期待、驚愕、戦慄、あらゆる感情が渦を巻いているのが見えるようだった。けれど、リゼルの灰銀の瞳は空の玉座から離れない。きらきらと降る光のかけらが床と銀の椅子を寿く。紅いカーペットがリゼルの足を導いた。孤独な冬の玉座へと。あの場所が寂しいと知っているから、ずきずきと心が傷んだ。
「ぼくはリゼル・オロ・レヴェニア。此度の一件により、この国の王となった。よろしく頼む」
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