「リゼル・オロ・レヴェニア殿下」

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 リゼルは夜に目を覚ます。昼間は部屋の鍵が閉まっているから、起きていても意味がない。けれど夜になれば誰かが鍵を開けてくれるのだ。扉を開けた先にはアルケミラがある。累々と宝石にも等しい価値のある書物の棚が列をなし、五百年の歴史の記憶が詰まっているこの場所がリゼルは好きだ。  ここで一生過ごすつもりだし、約束がリゼルをここから逃がさない。錬金の王の生き写しを自由にしてしまえば、父王の立場も次期王である兄の立場も揺らいでしまうから、父王はリゼルに決して人に見られないことと、城を出ないことを約束させたのだった。
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