「リゼル・オロ・レヴェニア殿下」

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 今にも泣きだしそうなはしばみ色の瞳を見ていたら、リゼルは何も言えなくなった。  ──ほんとうは、王さまになんてなりたくない。ここにいたい。  リゼルは唇を引き結んだ。兄の身体に回した手に力を込めて、口を開く。 「兄上なら、大丈夫です。きっと全部上手くいきます。ご武運を」  立ち上がった兄はいつもよりももっと格好いい顔をして踵を返した。ふたり分だったランプの光が一つなくなって、ほどなくしてリゼルのランプの灯火も静かに消えた。
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