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チャーリーの愛する人ってじつは……
「イザベル、やめないか」
「イザベル、だめだ」
チャーリーとチェスターの制止の声も虚しく、いままさに叩かれようとして……。
「キャッ」
すごい衝撃に、おもわず悲鳴が出てしまった。
「はじめまして、お義姉様。感激ですわ。ほんと可愛らしいお義姉様だこと」
「く、く、く、く、くる、苦しい……」
グイグイと体を締め付けられ、というか抱きしめられて息が出来ない。
「だから、やめろってイザベル」
「イザベル、ランが圧死してしまう」
チャーリーとチェスターが、文字通り彼女をわたしから引き剥がしてくれた。もしもそれがもうすこし遅かったとしたら、死んでしまったかもしれない。
それほど苦しかった。
「やだ。わたし、またやってしまったわ。うれしくってつい」
「だから会わせたくなかったんだ。すくなくとも、興奮しないような状況で紹介したかったのに」
チャーリーがやさしく抱いてくれ、やっと息を整えることが出来た。
わたしがチャーリーの愛する人と思い込んでいたのは、彼の同腹の妹だった。
彼女は、ふだんは社交の場からいっさい遠ざかっているらしい。その美しさゆえに、世の貴公子たちの目に触れさせたくないからである。といえばきこえがいいけれど、じつは彼女はチェスター一筋らしい。そして、チェスターも彼女を愛しているとか。相思相愛の二人は、あとはタイミングという状況らしい。
が、チェスターの実家の状況が好転するまで、彼は結婚に踏み切れないとか。
彼女、つまりイザベルは、チャーリーにチェスターの尻を叩いてはやく自分にプロポーズするよう説得してほしいと頼んでいたらしい。
東屋で見たのは、それを頼んでいる途中だったというわけ。
はやい話が、わたしはまったく見当違いの勘違いをしていたのである。
「社交界から遠ざかっているというのは、なにもチェスターとの関係だけではなくてね。イザベルは、残念すぎるんだ。見た目以外、だけどね。手が付けられないほどおっちょこちょいだし、早合点しすぎだし、不器用すぎるし要領が悪すぎる。頭脳明晰なのに理屈っぽすぎるから、周囲に誤解を与えまくる。それ以上に、面倒くさがりでなんでも鬱陶しがる。なにより、怪力すぎるんだ。容姿がよすぎる分、異常なまでの怪力がよりいっそう恐怖を与えてね。だから、自分から静かな暮らしを望んで王宮の片隅でひっそり暮らしているというわけ」
チャーリーの説明に、イザベルはにこやかに両肩をすくめた。
(はあ、なるほど)
いろいろ問い質したいところではあるけれど、彼女がひっそりとした暮らしを選択した気持ちはわかるような気がする。
「まぁ国王陛下と王妃殿下は、彼女のことが可愛いらしくてね。多くの貴公子たちから、彼女を守っているということもある」
チャーリー曰く、あの王妃も彼女にはなぜか弱いらしい。
とりあえず、すべてはわたしの勘違い。思い違いだった、というわけね。
心からホッとした。同時に、イザベルとチェスターを応援したくなった。
だってイザベルって一途で可愛らしいから。東屋で見かけたことは別にして、初対面なのに彼女のことが好きになってしまった。そんな彼女には、心から応援したいと思わせるなにかがある。
ただ、あの殺人的ハグだけは勘弁してもらいたいけれど。
そして、ふと考えた。
では、チャーリーの本物の愛する人とは、いったいだれなの?
ということを。
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