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―そう、昔の私はもういないの。
私の暗い過去は私自身で消したんだから。
もう、大丈夫。―
「行ってきます」
私は、かりん。住んでいる街から遠く離れた高校に合格して、晴れて今日から高校生。
私の一番の理解者だった幼なじみのしゅうくんが小2で転校してしまってから私はずっと一人だった。でも、私の中身を知ろうともせずに無視してくるような知り合い達は一人もいない新天地で人生をリスタートすると決めた。そう、昔の私はもう消したのだ。今日のためにダイエットもして、ヘアメイクも研究した。昔の冴えなかった私とは誰も気づかないだろう。それにSNSもはじめた。地元の同級生との縁は切ることにしたから、フォロワー欄はまだ0人。でも大丈夫、これから埋めていくの。今度こそ、信頼できる友達に出会えるように祈りながら、バックにつけたお守りの人形に触れる。そして教室のドアの前に立った。始まりのカウントダウン。
3、
練習してきた通りにすれば大丈夫
2、
できるだけ自然に
1
そしてドアを開ける。
教室にいる人たちが一斉にこちらを見た。
―大丈夫 逃げるな、かりん―
「おはよう」
言えた。
みんながおはようって返してくれる。
こんなの久しぶり。うれしい。みんなは友達になろうとか、かわいいって言ってくれた。
その時、
「もしかして、かりん?」
教室にいた人の一人が声をあげる。
え、誰。もしかして、同じ中学校の人…?
ここまで頑張ってきたのに?
「かりんだよね?覚えてない?僕、しゅう」
え、しゅうってあのしゅうくん?
見上げると、背の高いかっこいい男の子がそこには立っていた。
そして、その子は自分のバックについていた私と同じお守りの人形をこちらに見せる。
しゅうくんだ。優しそうな面影はしゅうくんそのものだ。
「しゅうくん!?ほんとに、しゅうくんだ。」
「「久しぶり」」
私の高校生活、楽しくなる予感…。
おはよう、私の青春。
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