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「よぉ、オッサン」
カナタが俺を呼んだ。
いつしか物思いに沈みこんでいた俺の隙をつくようにして、シールドに潜り込み、テレパシーで。
「なんだ……カナタ。随分と『ぶしつけ』だな。今、どこだ?」
GPSを手繰るようなマネはしなかった。任務中じゃないのだから。
「家だよ。自分の部屋」
「何か食べたのか? 体調は?」
「食欲なんか、わかねぇよ。これだけアドレナリンがドバドバ出てりゃな」
たしかにムリもない。
「だが、落ち着いたら何か口にしろ。それと水分だけは取っておけ。脱水が怖い」
「ったく、なんだよ、オッサン。マジ小言しか言いやがらねぇし」
「ふてくされるな。第一、お前が心配ばかりかけるからだろう、カナタ」と。
思わずそう言ってしまって、
「確かに……小言ジジイだな」と自覚した。
「なあ」「だから、なんだ?」
「オレさ、メチャクチャ勃起してんだよ」
「……」
「もう、おかしくなりそうだ」
「だれか……」
「付き合って」くれるヤツはいないのか、と。
そう言いかけて、俺は止める。
「オレを抱けよ、オッサン。セックスしてくれよ」
カナタ――
「さっきからずっと、感覚の暴走が止まらねぇんだ。身体中がバラバラに引きちぎれそうだ」
そして、微かな喘鳴音。
「カナタ、ゆっくり呼吸しろ」
「だから……っ、抱いてくれ、俺を、いますぐ、犯って」
ゼイゼイと喉を鳴らし、「犯せよ、ヤッてくれ」と、カナタは繰り返す。
「来いって、はやく……っ」
刹那、俺のシールドが丸裸にひん剥かれた。
引っこ抜かれそうなほどの勢いで、腕を掴まれ引き寄せられる――感覚。
続けざま、思念ごとカナタに絡め取られた。
ディープキスのように。
奥深く。
ザラつく味蕾。あたたかい唾液。
なめらかな口腔。そんな――記憶。
滑らかに若い肌。張りつめたカナタの筋肉。
骨格。
「んっ……っふ…」
カナタが嬌声を押し殺す。
甘い体液と汗の匂い。垂直にそそり立った男塊の硬さ。
「…ぁつ、あ、あ、っ……」
背筋の律動。
ペニスをせり上がってくる直接的な快楽の――伝播。
「ほし、い、ペニス…、犯…って、おく…まで、き、て…きて、きて」
イヤらしい、後孔のオルガスムス。
カナタの。
閃光。
震える、カナタの身体が。一度目のアクメ。
「…かな、た……息を、しろ」
カナタを打ちのめしている快感が俺の思考を焼き切って。
俺の得た快感もまた、カナタの脳に流れ込む。
反復。
止めどもなく繰り返す、快楽の信号のやり取りが。
やがて射精の律動。
襞に染み渡るような、濁液の熱。
なにもかもがバラバラに壊れそうだ……と、素肌で泣くカナタを。
両腕を広げて、俺は抱きとめる。
そんな、夢精の――
記憶。
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