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だが、地表に存在する者の確かな実感として、それが下がってきているように見えるのは紛れもない事実であった。
初めは緩やかに、やがて降下の速度は徐々に増していき、一枚の巨大な天蓋となって人々の頭上に重く圧し掛かってきたのだった。
太陽が溶け始めたころは上空にはまだ雲がかかっており、辛うじて見慣れた天の姿を見せていたものの、時が進むにつれその様相も変化してきた。
もはや原型を留めずに丸く収束したかと思えば四散に広がるのを繰り返す母なる恒星は、いつしか縦長の棒状形態に成りつつあった。
棒の先端にあたる部分には僅かに残されていた黒い雲片が纏わりつき、血のように外気を真っ赤に染めたそれは、人々に灼熱の煉獄に巣食う地底の悪鬼共が振るうような紅蓮の槌を連想させた。
あの団らん家族の女によってどんな心配事が届けられたのか、などと考えながら、私は休憩所を出て遊歩道を歩き始めた。
夕刻を深く過ぎた空は赤いステンドグラス張りの円天井のようになり、太陽はいよいよその輝きをぼんやりと失いつつあった。夜の帳が下りる時刻になってオフィス街の外燈が灯り、歩道の銀色の手摺をぼんやりと鈍色に照らし出している。
歩道は私と逆向きに歩く者が、初めは僅かな数だったのがやがて七人、八人と徐々にその数を増していった。ある者は私と同じく建物の出入り口から、またある者は林立する遊歩道の柵柱の陰から、バスストップの待合所の中から、ぞろりぞろりと瞬く間にその数を増やし、この界隈にこんなにも人がいたのかと驚く暇も無く、歩道のみならずアスファルトの上をも埋め尽くし、ワァァァク!ワァァク!と不快な音声を発しながら粘土のように土気色の顔肌をした亡者の群れが、まるで巡礼聖地へ向かう信仰者たちのように続いていた。
皆同じ方向へ意志なく流されていくように、そしてまた、同じ何かから逃れるように。
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