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「じゃあ何で…」
天井を支えるテツオの頭部からバチンと何かヒューズが弾けるような音がした。
「ワタクシはオフィス用ロボットですから、『行動規範がより人間に近づくこと』を最優先事項として設計されていマス」
テツオの腕は人工皮膚がめくれて機械部分がむき出しになり、バチバチと火花が散る。
「仲間を救う為にプログラムは必要ありまセン。人間とはそういうものらしいデス。ノリですヨ、ノリ」
「そっか、わかったよ。さぁ行こうぜ!」
二人はテツオを促しつつ、屋外に出る非常扉へ退避しようとしたが、
「駄目デス!」
と暗朦の煙の中を切り裂いてテツオの鋭い金属声が一段と甲高く響いた。
「まだ行っては駄目デス!オフィスの奥にある来客室に藤田サンがまだ残っている可能性がありマス!」
「え!リナさんが⁉」
そういえば、午前の藤田は少し貧血気味だったことを智久は思い出した。
「早く!私の力でもあまり長くは持ちまセン」
「おい、行くぞ甲斐!」「おう!」
二人は朦々と舞う黒煙の中へ飛び込み、視界が遮られている中でオフィスの見当をつけ来客用の部屋を探り当てた。
部屋の中へ雪崩れ込むと、来客用の長ソファに煙に巻かれて意識を失った藤田がぐったり横たわっていた。
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