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藤田を抱えて入り口まで引き返した二人は、
「さぁ、テツオ!リナさんは助けたぞ!おまえも一緒に逃げるんだ!」
「そうもいかないのデス。ワタクシがこの支えているコンクリートから手を放してしまうと、我々が屋外へ脱出する前に脱出経路が喪失する恐れがあるという可能性63・582……」
「わかったわかった、もういい!すぐに救助を求めてくるから、もう少しの辛抱だ!待ってろ!」
「斉場サン」
という声に智久は立ち止まった。
「藤田サンは黄色いお花が好きですヨ」
智久には、テツオの片目が破損の為にカタンと落ち、一瞬ウィンクしたように見えた。
「わかったよ……お利口さんで待ってろよ!」
二人は煙を払って藤田を抱えつつ何とか非常用の階段から一階出口まで辿りつくことができた。
「ゲホッ、甲斐、すまんが、リナさんを皆のところまで頼む。ここから一人で行けるか?」
「ゴホッ、大丈夫だが、お前はどうするんだ?」
藤田を甲斐に託した智久は、一足飛びに残りの階段を飛び下り救助隊員の元へ駆け寄った。
そこには先に避難して炎が上がるビルを呆けた面持ちで眺めている部長たちもいた。
「おお!斉場君!それに……ああ、甲斐君、藤田さんも!」
ビルの非常扉から藤田を背負った甲斐が全身煤まみれになりながら、ゆっくり現れるのが見えた。
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