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『僕は最後の部屋へと続く扉を開けた。
たどり着いた部屋は、正面以外の三方に何もないガランとした殺風景な部屋だった。
僕が歩き始めてから、どれくらいの時間が経ったろう。ずいぶんと長かったような気もするし、ほんの短いひと時だったような気もする。
ここにたどり着くまでの道のりは決して楽なものではなかった。それどころか、困難の連続でしかなかった。いや、もうそんなことなど、どうでもいい。
僕が着いた部屋の真正面には、重くて頑丈そうな扉がある。僕ひとりの力ではとても開けられそうもない、大きな扉。
でも、この扉の向こうは、僕が進みたい道ではない。第一、こんな扉を苦労して開けてまで、前へ進むなどまっぴらだ。もう面倒なことなんかやる気も起きない。
部屋の中には、永遠に続きそうな果てしなく暗い道がある。
道の入口をぼんやり眺めていると、不思議と吸い込まれそうな感覚になる。正面にずっしりと構えている、あの頑固な扉に比べれば、こっちの道は簡単に、そう、ほんの一足踏み出せば、それだけでスッと何の苦もなく進むことができるように思えた。
ここだ、僕が探していたのはこの道なんだ。
この道を行けば、どんな苦しいことからも逃れられる。
-でも本当にこの道でよいのだろうか。
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