4.ブラックジャックをよろしく

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クラスに戻ると、園長先生が私の所へやってきて、 「あ、先生。いま綾辻さん……(あゆ)()ちゃんが早退したいって言ってきてね。綾辻さんのお宅、うちのすぐ前だし、電話したらお母さまもお家にいらっしゃったから、お迎えに来てもらったの。歩美ちゃんも『ママを呼んでください。一緒に家まで連れ添って帰ってほしいなー』みたいなこと言っててね。何か妙な言い方だったわねぇ」 とクスっと笑いながら伝えてきた。 アユちゃんが早退? さっきトモキくんたちと遊んでいるときには、話し合いに交ざって普通にしていたのに、一体どうしたのだろう。急に体調でも崩したのだろうか。 アユちゃんの様子は気になったが、クラスの園児たちが次の時間を待っているので、一旦そちらへ戻ることにした。外を走り回ってきた子たちは汗だくだくになって、まだ息を弾ませている子もいる。 「みんな、いっぱい遊んできたかな?」 「はーい!」 「そっかー、みんなは何をしていたのかなー?えーと…」 ふと、アユちゃんのことが気になった。羽生伴樹くんと大下零二くんは仲良く二人並んで座っている。 「じゃあ、レイジくん。レイジくんは何をして遊んだのかな?」 と聞いてみた。 「はーい、ぼくはお医者さんごっこをして、トモキくんがぼくに天才外科医の役をよろしくって言ったから医者の先生になって手術をしていました!」 元気よく言ったレイジくんの言い方が面白くて、みんながどっと笑った。 「そうなんだ!へえ、凄いねぇ!手術は上手くできたかな??」 私がそう言った瞬間、強い殺気を伴った強烈な視線を感じた。 トモキくんだ。 トモキくんがレイジくんをもの凄い刺すような目つきで見つめている。 レイジくんもトモキくんの視線に気づいたのか一瞬チラとそちらに視線を這わせ、私のほうを向き直ると、変に強張った笑顔を作ると、 「もももちろん上手くいったさ。安心してよ」 と言った。 トモキくん、レイジくん。アユちゃんはどうしたの? あなたたち、本当に「それでは診察しましょう」とか「メスを!」とか言う、あのお医者さんごっこをやってたの? 〈了〉
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